「クラウドPBXは工事不要で初期費用がかからない」というフレーズを目にして、電話システムのリプレースを検討している方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、ひかり電話の契約状況や既存の電話番号をどう扱うか、外線を取り込む装置が必要かどうかによって、初期費用は大きく変わってきます。この記事では、クラウドPBX導入時の工事と費用の実態、発生条件、主要サービスの料金比較を具体的に解説します。
クラウドPBXの「工事不要」は本当か
クラウドPBXは、従来のビジネスフォン(PBX)のように物理的な交換機を社内に設置する必要がないため、「工事不要」と表現されることが多いサービスです。ビジネスフォンとは、複数の外線と内線を制御し、転送や保留などを実現する電話システムのことで、従来は専用の機器と電話配線工事が必要でした。
クラウドPBXではその交換機能をクラウド上で提供するため、原則として配線工事は不要です。スマートフォンやパソコンに専用アプリをインストールすれば、すぐに利用を開始できます。
ただし「工事不要=初期費用ゼロ」というわけではありません。以下のようなケースでは、初期費用や工事が発生することがあります。
- 既存の固定電話番号を引き継ぐ(番号ポータビリティ)場合の手続き費用
- ひかり電話の新規契約または回線工事
- 既存のビジネスフォン機を使い続けたい場合の外線ゲートウェイ装置
- 設定代行や開通サポートの費用
これらは契約プランや構成により、数千円から十数万円まで幅があります。「工事不要」という表現は、あくまで物理配線工事が不要という意味であり、すべての初期費用がかからないわけではない点に注意が必要です。
初期費用が変わる3つの条件
ひかり電話の契約状況
クラウドPBXの多くは、外線通話にひかり電話またはクラウド電話サービスを利用します。ひかり電話とは、NTT東日本・西日本が提供する光回線を使ったIP電話サービスで、従来のアナログ回線に比べて基本料金と通話料が安価です。
すでにひかり電話を契約している場合は、その回線をクラウドPBXに接続するだけで利用できるため、追加の工事費用はかかりません。一方、ひかり電話を新規契約する場合は、回線契約事務手数料や開通工事費が別途必要になります。
また、クラウドPBXサービス側が提供する050番号や03番号を新たに取得する構成であれば、ひかり電話の契約は不要です。この場合は回線工事も発生しないため、初期費用を抑えやすくなります。
番号ポータビリティの利用
番号ポータビリティとは、既存の固定電話番号をそのまま別のサービスへ引き継ぐ手続きのことです。会社の代表番号を変えたくない場合、番号ポータビリティを利用することで、同じ電話番号のままクラウドPBXへ移行できます。
ただし番号ポータビリティには、転出元(現在の電話会社)と転入先(クラウドPBX事業者)の両方で手続き費用が発生します。一般に数千円程度ですが、サービスによっては1万円を超えることもあります。また、番号の種類(NTT加入権番号か、ひかり電話番号か)によっても手続きが異なり、一度NTT加入電話に戻す必要が生じるケースもあります。
新しい電話番号で問題ない場合は、番号ポータビリティを利用せずに新規番号を取得すれば、この費用は不要です。
外線ゲートウェイ装置の要否
外線ゲートウェイとは、ひかり電話や公衆電話網とクラウドPBXを接続するための中継装置です。スマートフォンやパソコンだけで利用する構成では不要ですが、既存のビジネスフォン機(卓上の固定電話機)をそのまま使い続けたい場合、または複数拠点の外線を集約したい場合に必要になることがあります。
装置費用は数万円から十数万円、設置工事費が別途数万円かかるケースもあります。たとえば、ひかりクラウドPBX(NTT東日本)では、外線ゲートウェイを設置する構成の場合、装置121,000円と設置工事22,000円が公式料金表に記載されています(2026年9月時点で公式サイトにて確認)。
外線ゲートウェイが必要かどうかは、利用端末の種類と既存資産の活用方針によって決まります。新しく始めるならスマートフォンとアプリで運用すれば、この装置は不要です。
主要クラウドPBXの料金と初期費用の比較
クラウドPBXは月額料金だけでなく、初期費用の有無と金額がサービスによって大きく異なります。以下は2026年9月時点で各社公式サイトにて確認した主要サービスの料金です。
各サービスの料金表
ひかりクラウドPBX(NTT東日本)
- 月額:10ID 11,000円 / 20ID 20,900円 / 30ID 27,500円(税込)、追加660円/ID
- 初期費用:基本工事8,250〜9,350円 + 新設工事14,300〜16,500円
- 外線ゲートウェイ構成の場合:装置121,000円 + 設置工事22,000円
MOT/TEL
- 月額:5,980円(税別) / 20内線までの定額
- 初期費用:29,800円
Zoom Phone
- 月額:1,659円(税別) / ユーザー・月(日本従量制)
- 初期費用:公式サイトに記載なし
ナイセンクラウド
- 月額:ライト(1内線)2,000円 / ペア(2内線)5,000円 / プロ(5内線〜)10,000円
- 初期費用:一律10,000円
- ※10内線時の月額は非公開
OGクラウドPBX(officegate.cloud)
- 月額:テナント料(ライト2,000 / スタンダード3,000 / プレミアム5,000円・税別) + 内線1席1,500円(税別・最低3席〜)
- 初期費用:0円、開通最短3日、工事不要
- 前提:自社のひかり電話を収容する方式のため、ひかり電話契約が前提
- 特徴:席数料金に保守サポート(設定変更代行・障害対応・監視)を含む
なお、本メディアは株式会社オフィスゲートが運営しており、本記事で紹介するOGクラウドPBXは同社の製品です。
10人で使った場合の試算例
従業員10人で利用した場合の月額費用を試算すると、以下のようになります(あくまで試算であり、構成やオプションにより変動します)。
- MOT/TEL:5,980円
- ひかりクラウドPBX:11,000円
- Zoom Phone:16,590円
- OGクラウドPBX:18,000円(スタンダード3,000円 + 内線10席×1,500円)
- ナイセンクラウド:10内線の金額非公開のため試算不可
金額は各社の公式表記のまま記載しています。ひかりクラウドPBXのみ税込、ほかは税別です。税抜・税込をそろえると順序が変わる場合があるため、比較の際はご注意ください。
このように、月額だけを見ても数倍の開きがあり、初期費用も0円から十数万円まで幅があります。単純な料金比較だけでは判断できず、ひかり電話契約の有無、番号ポータビリティの要否、既存機器の活用方針などを総合的に検討する必要があります。
最新の料金や詳細な条件は各社公式サイトでご確認ください。
導入前に確認すべきポイント
既存の電話番号を使い続けるか
会社の代表番号を変更できない場合、番号ポータビリティの手続きが必要です。その場合、転出元と転入先の両方で手数料がかかるため、事前に金額と手続き期間を確認しておきましょう。
一方、新規番号で問題ない場合は、クラウドPBX事業者が提供する050番号や市外局番付き番号を取得すれば、番号ポータビリティの費用は不要です。名刺や看板の変更コストと比較して判断してください。
既存の電話機を使い続けるか
今使っているビジネスフォン機をそのまま使いたい場合、外線ゲートウェイ装置が必要になることがあります。装置費用と設置工事費を含めると、初期費用が10万円を超えることもあります。
スマートフォンやパソコンで運用する構成に切り替えれば、この費用は不要です。リモートワークや外出先での対応も容易になるため、働き方の変化に合わせて端末構成を見直すことをおすすめします。
ひかり電話の契約有無と回線工事
すでにひかり電話を契約している場合、追加の回線工事は不要です。クラウドPBXサービス側の設定だけで利用開始できるため、初期費用を抑えやすくなります。
ひかり電話を契約していない場合は、新規契約に伴う工事費が別途発生します。また、クラウドPBX事業者が提供する電話番号を使う構成であれば、ひかり電話の契約自体が不要になることもあります。構成により費用が変わるため、事業者に事前確認することが大切です。
サポート費用と運用コスト
初期設定や番号ポータビリティの手続きを自社で行うか、サポートを依頼するかによっても費用は変わります。設定代行サービスを利用する場合、別途数万円かかることがあります。
また、月額料金に保守サポートが含まれているか、設定変更のたびに費用が発生するかも確認しておきましょう。社内にITに詳しい担当者がいない場合、サポートが手厚いサービスを選ぶほうが、長期的には安心です。
工事費用を抑えるための選び方
初期費用ゼロのサービスを選ぶ
初期費用を抑えたい場合は、初期費用0円を明示しているサービスを選ぶのが確実です。ただし月額料金が高めに設定されていることもあるため、年間のトータルコストで比較することが重要です。
既存資産を活用しない構成にする
既存のビジネスフォン機を使わず、スマートフォンとアプリだけで運用すれば、外線ゲートウェイ装置が不要になります。端末費用はかかりますが、すでに社員が使っているスマートフォンを活用できる場合もあり、柔軟な働き方にも対応できます。
ひかり電話の契約状況を確認する
すでにひかり電話を契約している場合は、その回線を活用できるクラウドPBXを選べば、追加の回線工事費は不要です。契約状況を事前に確認し、見積もり時に伝えることで、無駄な費用を防げます。
複数社に見積もりを依頼する
クラウドPBXは料金体系がサービスごとに大きく異なります。月額料金、初期費用、サポート費用、オプション料金を含めた総額で比較するため、複数社に見積もりを依頼しましょう。その際、現在の電話環境(ひかり電話の有無、使い続けたい電話番号、既存機器)を正確に伝えることが、正確な見積もりを得るポイントです。
クラウドPBXの導入を検討している方には、複数のサービスを比較検討することをおすすめします。主要5製品の月額・初期費用・課金の単位は、クラウドPBX比較(オフィスDXナビ)にまとめています。
まとめ
クラウドPBXは「工事不要」と謳われることが多いものの、実際には初期費用や工事が発生するケースがあります。ひかり電話の契約状況、番号ポータビリティの利用、外線ゲートウェイ装置の要否によって、初期費用は0円から十数万円まで幅があります。
導入前には、既存の電話番号を使い続けるか、既存の電話機を活用するか、ひかり電話を契約しているかを確認し、複数社に正確な見積もりを依頼することが大切です。月額料金だけでなく、初期費用とサポート内容を含めたトータルコストで比較し、自社の働き方に合った構成を選びましょう。
クラウドPBXの導入は、電話環境の見直しだけでなく、リモートワークや営業の効率化にもつながる投資です。費用の全体像を正しく把握し、長期的な視点で判断してください。