「Wi-Fiが遅い」と社内から声が上がっても、原因が回線速度なのか、無線LAN機器なのか、電波干渉なのか判断がつかず、どこから手をつければよいか分からない。総務と情報システムを兼任している担当者にとって、こうした声への対応は頭を悩ませる問題です。この記事では、オフィスWi-Fiが遅い原因を特定する手順と、それぞれの対処法を具体的に解説します。まずは切り分け診断で原因箇所を絞り込み、適切な対策を打てるようになります。
オフィスWi-Fiが遅くなる主な原因
オフィスのWi-Fiが遅いと感じるとき、原因は大きく三つの階層に分けられます。それぞれ対処法が異なるため、まずどの階層に問題があるかを特定することが重要です。
回線速度の問題
インターネット回線そのものの速度が不足している場合です。契約しているプロバイダや回線の種類、帯域が業務量に対して足りていないケースが該当します。一般的に法人向け回線は上り下りとも安定した速度が求められますが、契約プランによっては混雑時に速度が低下することもあります。
無線LAN機器の問題
アクセスポイント(以下AP)と呼ばれる無線LAN機器の台数や性能、配置が適切でない場合です。オフィスの広さや接続デバイス数に対してAPの台数が不足していたり、古い規格のAPを使い続けていたりすると、Wi-Fi速度が出ません。
電波環境の問題
物理的な障害物や電子機器による電波干渉、利用する周波数帯の混雑などが原因で、電波が届きにくくなっている場合です。オフィス内のレイアウト変更や、周辺ビルの無線LANとのチャネル(電波の通り道)重複も影響します。
原因を切り分ける診断手順
遅さの原因を突き止めるには、順番に切り分けていくことが効率的です。以下の手順で進めると、どこに問題があるか絞り込めます。
手順1:有線LANで速度を測る
まず、Wi-Fiではなく有線LANケーブルでパソコンをルーターやスイッチングハブに直接つなぎ、インターネット速度測定サイトで実測値を確認します。有線接続で十分な速度(契約回線の7〜8割程度)が出ているなら、回線自体は問題ありません。逆に有線でも遅い場合は、回線側に原因がある可能性が高いです。
手順2:APの近くで速度を測る
有線で速度が出ていることを確認したら、次にAPのすぐ近く(1〜2m以内)でWi-Fi接続して速度を測ります。このとき有線とほぼ同等の速度が出るなら、AP自体の性能や回線との接続は正常です。APの近くでも遅い場合は、AP機器の性能不足や設定、APとルーター間の配線に問題があると考えられます。
手順3:遅いと言われている場所で測る
APの近くで速度が出ているのに、特定の場所や時間帯で遅くなる場合は、電波環境に問題があります。距離が離れすぎている、壁やパーティションで遮られている、他の無線機器と電波が干渉しているなどが原因です。
手順4:接続台数と時間帯を確認する
速度測定の結果に加えて、同時に何台のデバイスが接続しているか、遅くなる時間帯は決まっているかも確認します。朝の始業時やWeb会議が集中する時間帯だけ遅い場合は、APの同時接続数や帯域が不足している可能性が高いです。
原因別の対処法と判断基準
切り分け診断で原因が分かったら、それぞれに応じた対処を進めます。ここでは具体的な対処法と、実施すべきかどうかの判断基準を示します。
回線速度が原因の場合
有線でも速度が出ていない場合は、回線プランの見直しやプロバイダの変更を検討します。現在の契約が光回線で100Mbpsなら、1Gbpsプランへのアップグレードを検討しましょう。ただし、回線工事には数週間かかることが一般的です。また、ベストエフォート型(混雑時に速度が保証されない)契約の場合は、法人向け専用線への切り替えも選択肢になります。
無線LAN機器が原因の場合
AP機器が古い規格(IEEE 802.11nやac)の場合、最新規格のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応機器への更新を検討します。従業員10〜50名規模のオフィスでは、一般的にフロア面積100平方メートルあたり1〜2台のAPが目安とされています。APが不足している場合は増設が必要ですが、設置場所にLAN配線が来ていない場合は配線工事も必要になります。
AP増設時には、PoE(Power over Ethernet:LANケーブルで電力供給する仕組み)対応のスイッチングハブを使うと、電源コンセントの増設工事を省略できます。予算が限られている場合は、まず最も利用者が多いエリアから優先的にAPを増設するとよいでしょう。
電波環境が原因の場合
電波干渉が疑われる場合は、使用するチャネルの変更やAP設置位置の調整で改善することがあります。2.4GHz帯は電子レンジやBluetooth機器と干渉しやすいため、5GHz帯を優先的に使うよう設定します。ただし5GHz帯は壁を越えにくい性質があるため、遮蔽物が多いオフィスではAPの配置を工夫する必要があります。
具体的には、会議室や執務エリアの中心付近にAPを配置し、金属製のロッカーや大型コピー機の陰にならないようにします。天井に設置する場合は、照明器具や空調ダクトから離し、できるだけ開けた場所を選びます。
見落としがちなチェックポイント
診断と対処を進める際、見落としやすいポイントがいくつかあります。以下を確認しておくと、原因特定の精度が上がります。
APの同時接続台数上限
APには同時に接続できる端末数の上限があります。業務用スマートフォンやタブレットが増えると、気づかないうちに上限に達していることがあります。管理画面で現在の接続台数を確認し、上限に近い場合はAP増設を検討しましょう。
ファームウェアの更新
APやルーターのファームウェア(機器内部のソフトウェア)が古いままだと、セキュリティリスクだけでなく速度低下の原因にもなります。定期的にメーカーサイトを確認し、最新版が公開されていれば更新します。
周辺機器との干渉
電子レンジやコードレス電話機、Bluetooth機器はWi-Fiと同じ2.4GHz帯を使うため干渉します。給湯室や休憩室の電子レンジが稼働する時間帯に遅くなる場合は、APを5GHz帯メインに設定するか、電子レンジから離れた場所にAPを設置します。
対処の優先順位と費用感
原因が複数ある場合や予算が限られている場合は、対処の優先順位をつけることが大切です。一般的には以下の順で検討すると、費用対効果が高いとされています。
まず、設定変更やファームウェア更新など、費用がかからない対策から試します。次に、APの追加配置や移動で改善できるか検討します。それでも解決しない場合は、AP機器の更新や増設を検討し、最後に回線プランの変更を検討する流れです。
回線を高速プランに変更すれば全て解決すると思われがちですが、実際にはAP台数や配置、電波環境が原因であることも多く、回線だけを強化しても改善しないケースがあります。まずは切り分け診断で原因を特定してから、必要な部分に投資することが重要です。
より詳しいオフィスWi-Fi環境の構築と選定基準については、オフィスWi-Fi導入のポイントで解説しています。
まとめ
オフィスWi-Fiが遅い原因は、回線・無線LAN機器・電波環境の三つに大別されます。有線接続での速度測定、APの近くでの測定、実際に遅い場所での測定という順番で切り分けることで、どこに問題があるかを特定できます。原因が分かれば、設定変更・AP増設・回線変更など適切な対処法を選べるようになります。回線だけを強化しても解決しないケースもあるため、まずは診断で原因を絞り込むことが重要です。
Wi-Fiが遅いという声への対応は、切り分け診断と適切な優先順位をつけることで、限られた予算と時間の中でも改善できます。まずは本記事の手順で原因を特定し、効果的な対策を進めてみてください。